2017/10/20

テレビ通販

ごくたまにTV通販の番組に出演している。

そもそもの最初は、企業サマから提案を受けて、自分がプロデュースした(ヨガのポーズを参考にした健康器具)商品を売ったことベトナムの工場とやり取りして試行錯誤を繰り返し、2年かけて完成品にたどり着いた商品。使い方DVDの撮影、ナレーション録りなど、大変だったけれど貴重な体験をさせてもらった。

その商品を掲げて番組に出演したのは計3回。正直、あまり良い売れ行きではなかったが、そこで番組とのご縁が生まれた。

それ以降は、(商品開発に自分は関わっていない)既存の製品について、長年の愛用者代表で、かつ専門知識を持つアドバイザーのような立場として出演させてもらっている。

その理由は「苦手なことにチャレンジ」するため。「いつものアレ」が通用しない場に身をおいてみるため。分のクラスで調子こいてちゃヤバいよ!という己への戒めである。

私がお世話になってる番組は60分の生放送まず司会進行役のプロ(=キャスト)がいて、そこに商品を解説するスペシャリスト(=ゲスト)として私がいる。

アンミカさんのような一部のカリスマゲストを除き、大抵のゲストTV放映の現場ではド素人だ。普段、自分が身を置く分野で我がもの顔をしている先生たちが、このTVのゲストに招かれて、アイタタな思いをする。周りに乗せられうっかり出てみたけれど、あまりに勝手が違う現場。一度で凝りてしまう人が多い。ま、本人が凝りてしまう程度の出来具合なら、きっと二度目のお声も掛からない。

そうしたアイタタな経験を繰り返しながらも出演回数を重ね、私なりに学んだTV通販ゲストの5カ条」を書いてみる。学習していった時系列で項目を並べてみよう。

〈1〉
a. 棒立ちの頷きマンにならない。
放送事故が許されない生放送の中、限られた時間でやるべきことは山ほどある。商品の説明、フリップの解説、動画の解説、スタジオに呼んだモニターさんの実験、購買者との電話やり取り等々。素人のゲストに任せられないので、プロのキャストが喋りまくる。ここでゲストはまず立ち往生する。キャストのトークにインサートするスキがないのだ。「相手の話が終わるまでは自分から遮っちゃダメですよ」んて親の教えを守っちゃいられない。かぶせて、かぶせていかないと、60分間「そうですね~」「はい~」しか言ってないゲストで終わってしまう。まずは、キャストにのまれずに、ちゃんと話せるようになるか。

b.聞かれたことに返事をするだけじゃなく、自分からも新たな話を切り出す。
新米ゲストといえど、番組出演前にはそれなりの準備をする。商品についての予習復習。面白いエピソード、新たな視点、etc.。自分の話したいことを書き出して暗記してみたり。だが、悲しいかな、どれだけ用意しようと、進行役であるキャストの操縦法に乗っていけない限り、自分が用意したシナリオの出番は無い。ここで私がテンセグ認定講師のフォローアップ研修で教えている、まさにそれが役に立つ。キャストと目を合わせる。息遣いを合わせる。テンポを合わせる。すると、インサートのタイミングがわかる。相手の波に自分の調子を合わせていくうち、わずかな瞬間を逃さず大きく波に乗れるようになる。これには事前の打ち合わせ時間も大きく影響する。キャストとゲストは1間前に初めて顔を合わせ、そこで20分ほど打ち合わせをするのだが、最初の頃はこの打ち合わせ時間を有効に使えない。キャストが放つ業界オーラにタジタジになる。必要以上に腰が低くなる。そんな自分が悔しくて、用意してきたシナリオをまとまりなく噛み噛みでまくしたててみたり。そうではなく、本来のこの時間の使い方は、互いのトーンを探り、理解し、商品をどの切り口から売ろうか、不明点をクリアにし、2人のコンセンサスを作るため、つかの間のパートナーシップを結ぶための時間なのだ。


〈2〉その商品の特性に留意した上で、放送でのNG表現を使わずに60分をこなす。
これは私にとって強力な戒めとなっている。TV通販を経験するようになってから、言葉や表現に対してより慎重になってきた。「自分の狭い持ち場でもてはやされて、人をその気にさせるテクも身につけたつもりになってるけど、それ実は勘違いかも。ヤバイかも」と常に自覚するようになった。番組では自分流の喋りがいっさい通用しない。エビデンスが無いことは言えないのは当たり前だが、それ以上にNGワードだらけなのだ。とりわけヨガのクラスで無自覚に連呼している言葉たち。血流、リンパ、自律神経、冷え、むくみ、痛み、改善、効果、体の特定部位を指す等々。それだけをチェックするスタッフもいるし、その指導も入る。あらゆるネガティヴ要素を顧慮して、それでもOKな表現だけで話すのは至難の技だ。最初の頃はそれを気にして、ますます失語症になり脱落していく。だが、それすら経験の中で、別の表現法がいくらでも見つかるようになる。とても簡単な例でいうとーーーたとえば「腰痛が治った」と言えなくても、自分の腰あたりを触りながら「このあたりが楽になった」と言えばいい。「私に効果があった」と言えなくても、「私の友達が前より良くなったと言ってる」と言えばいい。


〈3〉今現在の注文状況を把握し、次に何をすべきか理解する。
〈1〉ではキャストとリズムを合わせて2人で良いコンビになるのが目標だった。ここではさらにレベルアップして、コンビで「商品を売る」のが目標となる。いや、そもそもの目標はそれでしょ!!と言われるかもしれないが、これがなかなか難しい。プロであるキャストだけがイヤモニ(イヤホンモニター)を付けていて、サブからの指示をもとに臨機応変に進めていく。こちらはキャストがどの方向に行かせようとしているのかを察知して、そこに乗っていく。複数商品の中で、今 注文が伸びているものに勢いをつけてまずそれを完売させるのか。あるいは伸び悩んでいるものに焦点をあてていくのか。商品の種類、色柄、サイズなど。モニター画面の端に表示されるデータ。ディレクターが出す手書きフリップ。そうしたサインに気を配れるようになると、ようやく半人前から一人前のゲストになる。自分が上手に振る舞えるか、どう見られるかレベルの自意識からはとうに卒業している。そこにいるのは、全体を見渡して何が自分の役目かを自覚したプロとしてのゲストだ。


〈4〉
a. 均一な内容を適切なペースで繰り返す。
同じことを繰り返す。たとえば15分ブロックで完結させる。10分かけて紹介したら、5分は確認の時間。不安、疑問、迷いを生じさせない時間帯。そうしたブロックを数回繰り返すことで、途中から観る視聴者にも同条件で番組内容を成立させる。

b. 緩急をつけて、注文のタイミングを作り出す。
電話を掛けてもらうスキというか、電話をしてもらうタイミングを作る。「もう分かった。また同じことを言っている。OK、気持ちは変わらない。よし!注文しよう!」なのだ。そこでまた新しいことを言ったら、「え?何?どーいうこと?」とTV画面に振り向かせてしまい、新たな迷いを生みかねない。次から次へと新ネタの披露はいらない。止まらぬ流麗トークはいらない。要求されるのはシンプルで揺るぎない情報の提供だ。背中を後押しするに最適な情報の質と量だ。


〈5〉 お客さまの幸せを願い、真心をこめて商品を宣伝する。
最後の最後は、ちょっとベタだけど。やはり「愛」なのだ。カメラの向こうにいる、会ったこともないアナタに幸せになってほしいから。「これ、本当にお勧めなんです。これを使ってもっと楽になって、ハッピーになってください!」と、本当に思えてくる。だから商品を勉強する。だからパートナーであるキャストを理解する。それはすべて商品を購入するお客さまのため。会ったこともないどこかの誰かのため。愛をこめて。実績や信用や夢や何もかもひっくるめて、プロフェショナルとして当たり前の努力・責任・栄誉なのだ。

ヨガとは違う、苦手なものを…な気持ちで始めたけれど、結局は…。
継続は力なり。継続は愛なり。その力と愛はジャンルを超えて通じるなり。







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