2014/09/03

いじられる立場

メイク用品のチョイスや整理法にまとまりがなかった。部屋には大きなメイクボックス。引き出しの中には旅用の携帯コスメぐっちゃり。そして当然ながら持ち歩くバッグの中に化粧ポーチ。

なんだか散らばりすぎ。地方出張のたび、中身を全部点検して入れ替えたり。バカみたい。使わない色は永遠に使わない。使い勝手のよいペンやブラシは決まっている。

というわけで、使うものをミニマムにして、ひとつにまとめてみた。化粧ポーチも新調。「私も同じやつ持ってる」と言われ続けた無印のじゃなく、ちょっと高め。大人な感じの自分らしい色合いのやつ。朝、化粧する際はこのポーチを開く。出掛ける時はポーチをバッグに。出張や旅行もこのポーチがあればOK。ぜ〜んぶカバーできるよう今回は大きめのポーチ。

憧れの「ひとつだけ」。いつも、これだけ。シンプルな潔さ。

デカ過ぎた。いつものバッグの中で、化粧ポーチが非常識なほどスペースを占拠して、バッグ自体の重さも増している。そして気がついた。私は外でほとんど化粧直しをしない。眉はアートメイクだし睫毛はパーマだし。出掛ける前に化粧をしたら、どれだけ汗をかいても帰宅するまで顔は放置状態。日中でも使うリップや保湿スプレーはバッグの別のポケットに入れてる。ファスナーを開くことすらしない無用のデカブツを持ち歩いてるなんて。それこそバカみたいだ。ポーチのデザイン自体は気に入ってるのに。残念。

化粧といえば、いつかのワークショップで、とても有名な大先生が写真を撮られる際に「やだー、私すっぴんなのにー」って、顔を両手で覆ってきゃーきゃー。いや、してるし。まぁそんなに濃くはないけど、瑞々しさを失った肌のファンデはばればれだし、マスカラもアイラインも口紅もしっかりついてるし。なのに、ずっと「今日はすっぴんだから」を繰り返してた。周囲はそのウソを受け入れる。大御所だもんね。ひきつり笑顔で「すっぴんでもお綺麗ですよ」って。

生徒たちは陰で言う。ワークショップ後のロッカーだったり、その後の飲み会だったり。
「がっつり塗ってたよね。返しに困ったー」
「『〜です』と『〜でしょう』一緒くたになって『〜でしゅ』連発に肩ふるえたわ」
「『がちょ〜ん』の時、みんな引きすぎ。私は笑ってあげたよ」

かといって、悪意があるわけじゃない。ワークショップの内容自体は「めちゃくちゃ良かった。とても勉強になった」と好評だし敬意も評している。

かつての私は、そういう生徒たちの典型だった。クラスの中でも少し不真面目な連中とツルんで、大げさに言えば反体制派から眺めて、集団の長をいじるのが得意だった。

しかし、歳をとってくると、そっち側にいるのが無理になってくる。どれだけ青臭いことを言っても、どれだけ気さくに振る舞っても、もはや感覚の大部分が彼女たちと異なるようだ。いっけん話が弾んでいるようで、実は「合わせてもらってる」のが分かる。私のようなオバさんがいては居心地悪くて本音トークができないのが分かる。いじられている。それを半ば気づいていながら、知らないフリをする。私が話している斜め横で、生徒や後輩同士が目配せをしているのが分かる。それでも気づかないフリをする。そんなもの。寂しいな。ちぇー。


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